高潔の仁であった。
高感度、高淡白、高安定を特長とする不世出の偉人であった。
自己顕示欲は感じられない。龍馬との交遊も誇るところがない。
「漢(おとこ)は生涯に一事をなせばよい」、その一点を凝視すれば、得意も失意もない。
ただ歩むだけだ。淡々と歩む。大股で悠然と急ぐ。
剣は超一流。
身分は足軽(少し昇進して徒士)。
漢詩も読む、絵筆も取る。
酒も好きで時には二日酔もする、海釣りも鮎釣りも楽しむ。
ユーモア精神旺盛、「西洋の船は飯炊くハガマの羽根を取ったような格好じゃ。」
冬日照時間の短い東海道を一日16里(64km)歩く。剣客で健脚。
愛妻家で、家族引き連れての転勤族。行く先々で友達の輪を広げる。
気難しいヤツもいつの間にか談笑の輪に引きずりこむ話芸の巧みさ。
座禅もする、禅坊主と大酒を飲んで公案議論。
間口のひろい、引き出しの多いおとこ。
身分が低いから藩の負担による出張、研修はまれ。
すべて自費支弁、活動資金は両親の献身、家族ぐるみの応援。
さらに多額を要するときは、豪商(中村:木戸庄蔵)から鎧と短銃(6連発)を担保に100両を借り受ける。そのとき庄蔵言う「ワシは赤穂浪士を応援した商人の気分でやっているよ。(笑)」
中村の町衆にも支えられた樋口真吉。
漢は一仕事、終れば去るがいい。歴史の海に消えるがいい。
樋口真吉を偲ぶには四万十河口の下田の高台に立てばよい。
潮騒、浮雲、潮の香り。
人生 一片の雲 寄せては返す 波の音 |